岸田総理が「新しい資本主義の実現」を目指しています。

でもその内容があまり伝わってきません。
物事の内容が薄いとき、突飛な言葉が使われます。

「異次元の少子化対策」「百年安心の年金制度」などです。

たしかに、日本は30年近く賃金が上がらない一方で物価が上がりつづけています。
貧富の格差が広がっています。

「新しい資本主義」のキャッチフレーズは「成長と分配」でした。
共に(経済)成長して富を分かち合おう(分配)というわけですね。

でもこのフレーズはどこかで聞いたような…。

中国の習近平の唱える「共同富裕」です。

中国って社会主義の国なのに、何を今さら富の再分配をうったえるのでしょうか。

では、資本主義と社会主義の違いって何でしょう。

主義だからと言って、主義・主張を意味するわけではありません。
ちゃんと現実の経済体制があります。
資本主義の社会では私有財産制を認めていますが、社会主義の社会では認めていません。

欧米では市民革命と産業革命を経て資本主義が確立します。
資本を持った資本家が、資本をもとに生産手段を手入れ、労働者を雇って商品の生産を行う経済体制が出来上がりました。

自由競争によって大量の物が生産されるようになります。

経済学者のアダムスミスは、市場経済において各個人が自己の利益を追求すれば社会全体の利益につながる。
「神の見えざる手」(市場メカニズム)によって価格が自動的に調整されると説きました。

しかしながら、資本主義の発展は、失業や貧困あるいは資源と市場を求めての帝国主義戦争を引き起こしました。
第一次世界大戦や1929年の世界恐慌が思い浮かびます。
アメリカでは恐慌に対応して大規模な公共事業が行われました。
経済学者のケインズによって、資本主義体制を維持したまま経済制度の修正をはかろうとする、修正資本主義という主張が現れます。

岸田さんは「修正」という後ろ向きの言葉を使いたくなかったのでしょうね。

修正資本主義が主張される一方で、ドイツの経済学者マルクスは、資本主義はいずれ崩壊し、社会主義社会を経て「能力に応じて働き、必要に応じて分配する」ことを原則とする理想的な社会=共産主義社会が到来すると主張しました。
歴史を直線的に語るのはいかにも西欧的ですね。

社会主義では、生産手段を国家が所有し、所得の分配は各人の労働に応じて行われる。
共産主義では、(さらに生産力と人々の道徳が高度に発展し)国家に代わって自主管理の組織が社会を管理し、個人への生産物の分配は、各人の必要に応じて行われるというものです。

現在、社会主義と言われる国は、中国、北朝鮮、ベトナム、ラオス、キューバです。
資本主義と社会主義の政治体制を対比するときに、民主主義と権威主義という言い方をします。
権威主義というのは今一ピンときませんが、先の五ヵ国では共産党や労働党、革命党などによる一党独裁が続いています。

いずれにしても、現在のところ共産主義社会はどこにも実現していないようです。
先の五ヵ国を私たちが外側から見ても、言論の自由がなく、人々が豊かな暮らしを送っているようにも見えません

イギリスのトマス・モアは、封建主義社会から資本主義社会へ移行するなかで、イギリス社会への批判として、「貨幣が存在せず、財産共有制が敷かれている」というユートピア(桃源郷)描きました。
1991年に“ソビエト社会主義共和国連邦”が崩壊して久しい今、理想的な社会としての共産主義社会樹立の道のりは険しいようにも思われます。

広原校  戸越 勇夫